神奈川よさこい2日めに選んだ会場は厚木中央公園。ここにどでかいステージを作るというクラファンをぼくも支援していたのだが、目標金額には届かず終わった。が、達成の如何にかかわらずステージは作る、支援者にはリターンもあるという太っ腹ぶりで、ぼくは前方のパイプ椅子席に座る権利を得ていた。
行くしかあるまい。優先席をふいにして海老名や小田原会場なんぞに行く選択肢はな……。いや、実は少し悩みもした。どちらも勝手知っている。片や七重の塔、片やお城もしくはお堀端。どちらも背景がいい。一方、厚木中央公園はどうか。知らんぞ、行ったことないし。
それでもまー、本会場というだけあって、プログラムの充実度は一番だ。行くしかなかろう。本厚木。ちょっと遠い気もするが。つうか、相模線とか厚木乗り換えとか不便だが。偽厚木とか本厚木とか。あいや、東海道沿線民の繰り言です。

というわけで、最前列のほぼ真ん中に居座った。横30メートル、奥行き20メートルの巨大ステージ。高さは話に聞いていたよりあった。やや見上げる形になる最前列は、ベストな位置ではなかろう。背もたれのあるパイプ椅子ではなく、丸椅子が用意された4列め以降の方が全体を見渡す意味でもいいと思えた。しかし、ちんけな望遠ズームしか持たないぼくは、あまり後ろには行きたくないのであった。
いろいろ葛藤ありつつも、演舞が始まってしまえば、もう夢中。「今、ひとたび」、「成樂(と書いてセイラと読む)」、「駿河リゾート」、「ソフトバンクよさこい部」、「勢や(と書いてセイヤと読む)」などなど、どれも噂でだけ、写真でだけ、動画でだけ知っていた憧れのチーム。わくわく楽しが止まらない。シャッター押す指も止まらない。

ところが、ここへきて異変。カメラが起動しなくなっていた。え、なんで。電源入れたり切ったりしていると、わずかに一度「電池残量がありません」の表示。げっ、なんで。その後はもうウンともスンとも言わなくなった。ウソ、なんで。
電池切れという事態は、このカメラを使うようになって初めてだった。そもそも1日で電池を使い切ってしまうほど、ぼかぁ最近写真を撮っていない。小田原えっさホイで2000枚撮った時だって、電池残量は40パーセント以上あった。この日はまだ950枚しか撮ってない。のは帰宅後わかった。
プログラムはまだ半分残っていた。「疾風乱舞」も「誇咲(と書いてホコサキと読む)」も「大福」も、それにそれに「よさこい魂 和(と書いてアイと読む)」もこれからだ。えー、なにこれ。なんの罰。なんの拷問。

結局、写真を撮らないままに「疾風乱舞」の演舞を見た。ファインダー越しではなく、ナマで最初から最後まで見た彼女らは最高に格好よかった。ほれぼれした。撮ることではなく、見ることに集中できたから。怪我の功名というやつだろう。
それはそれでいいかと思い直し、その後の数チームを集中して見続けた。真鶴よさこいで楽しませてもらった「時遊(と書いてジユウと読む)」の演舞までは。だが、それが限界だった。2時を過ぎると、にわかに気温が下がってきた。「アイ」の出番まではまだ1時間半もある。カメラはないわ、寒いわの二重苦に、ぼくはさいなまれることになるだろう。くー、つらいぜ。決断するのが。
インフルエンザの感染指数というのか、そういうやつが、実は県下で厚木が一番高い。このまま4時、5時までここで過ごしたら、インフルまでいかずともぼかぁ必ずや風邪をひくだろう。カメラがあれば風邪と引きかえに耐えることもできようが、今日のところは無理。もう無理。退散。苦渋の決断。

駅へと向かう帰り道、他会場での演舞を終えてこちらに向かってくる「大福」の踊り子さんと遭遇した。このチームはかなりの数の子供を含めた大所帯で、赤ちゃんを抱いて踊る人までいたのを前日見た。真の赤子なのか、当然人形なのかは知らんけど。すれ違った踊り子さんはベビーカーを押し、ずいぶん疲れた顔をしていた。
演じる方も見る方も、移動の大変さが課題よなぁと思いながら帰途につく。それにしても、今回なぜこんなにも早く電池切れが起こってしまったのかも思案しつつ。劣化した? 実は100パー充電されてなかった? いや、してた。とにかく用意しないと、予備バッテリー。昔は持ち歩いていたのだ。純正品は高いので互換品を2つ3つ。

あともうひとつ、帰りの車内で感じていた。「アイ」に対しての申しわけなさを。いつしか「勝手に専属カメラマン」的な気持ちが芽生えていたのだ。彼女らは、というか彼女らのうちの誰かは、uminekojump名義でXにアップした写真に、必ず「いいね」をくれていた。必ずリポストしてくれた。YouTube動画のサムネールとしても使ってくれた。
そりゃあ、おいちゃんの心も動くというものさね。でも、「ごめん」はちょっとちがう気もするので、ここは「面目ない」と言っておこう。







