ハローワークに通い始めた頃のことは、こちら「遊び人と失業者のはざま」にて、少し詳しく書いていた。これから通う人の参考に……ならないか。たいして。
何度か求人票を眺めて過ごしているうちに、自分がフルタイムで働こうとは思っていないこと、まして週に5日も働こうとは思わないことが明らかになってきた。賃金にもさして執着していなかった。というか、シニアに対する求人なんてものは、最低賃金かそれに少々色をつけたものがほとんどだった。稼ぎたいのであれば、深夜の交通誘導でもするしかないようだった。
現役時代のスキルを生かして高収入とか、企業は広い視野を持った経験豊かな人材を求めているとか、そういう話はまぁ皆無ではないのだろう。しかし、レアなケースをまるでトレンドのように吹聴するのも、それを鵜呑みにしてしまうのもどうかと思う。少なくともハロワの求人票にそれはない。ビズリーチにはあるんだろうか。あるのかもしれんな。知らんけど。
そういえば、ハロワでも転職サイトでもなく、商店街を歩き回って、求人の張り紙を探し歩くという人がいた。大丈夫か、そんなんで。高校生の頃にはそんなこともしたような気もするが。いろいろアップデイトした方がよくないか。いや、他人のことはどうでもいい。ぼくの話だ。
固まってきた条件は、週に2、3日、数時間。ほぼ最低賃金。できれば誰かの役に立つ仕事。それを満たせそうなのがシルバー人材センターではないかとも思ったが、まず入会して会費を払って、それで今日は草むしり、来週は大工仕事、その先の予定は立ちません、というのはちょっとちがう気がした。働くのなら、同じ場所で同じ仕事を続けたかった。
そんなこんなで、7ヶ月間ハローワークに通った。必要な求職活動実績をどう積み上げたかというと、セミナー等への参加は一切なし、ひたすら相談で乗り切った。気になる求人票を選んで、担当者のいる窓口へ。応募状況がどうなっているか、すでに多くの人が応募して競争になっているんじゃないか、今からでも大丈夫か、などとどうでもいいことを一応尋ね、持ち帰って家族と相談してみますと引き取る。次の回も同じ担当者に当たったりするとやや気まずいが。
こうして、見る目はしっかりできた。シニアに対する求人がどの程度のものであるか。それ以上を望むのであれば、ハローワークは適さない。世間はシニアに多くを望んでいない。人事管理の手腕より商品の入れ替え。商談の経験値よりも、若い上司に従える謙虚さ。あと、気にかけておくべきは、50代や40代が応募してこなさそうなこと。はっきり60歳以上と謳ってくれればなおよし。
失業手当の給付期間は、ぼくの場合、240日あった。それが残りわずかとなったところで、初めて紹介状をもらった。仕事は、自転車駐輪場の係員。1日5時間、週3日。お昼前から(以前に見かけた早朝からのは見送っていた)。場所は、家から徒歩12分。応募者はすでに3人いたらしい。翌日面接、その場で採用が決まり、勤務が始まった時には給付期間終了まで3日を残すだけになっていた。
あれからそろそろ3年と3ヶ月。勤務は週に4日と増え、ぼくは9名中3番目の古参兵ともなった。今や大きな顔をして、背筋を伸ばして立っている。いってらっしゃい、おかえりなさいと声をかけるのが大好きだ。