駐輪場勤務の真実

そういえば、あのヨレヨレ日記シリーズにも、まだ駐輪場係員は登場していないようである。ヨレヨレ日記。「交通誘導員ヨレヨレ日記」とか「マンション管理員オロオロ日記」だとかのアレ。

そろそろ駐輪場係員のドキュメントが出てもいい。あと個人的に期待したいのはソバ屋日記だ。定年後、あるいは早期退職後にソバ屋を志すオヤジはなぜああも多いのだろう。そこに人生の楽園はあるんかと問いたい。ああ、あと古民家カフェな。

ともあれ、今回は自転車駐輪場勤務の真実。
といっても、公営と私営、地方と都会とではいろいろちがいもあるだろう。ぼくが語れるのは、地方都市の私営駐輪場に限っての話である。

ウチは24時間出入りできるが、有人管理しているのは午前6時から午後9時半まで。その間に5つのシフトが存在する。ざっくり分けると、朝1、朝2、午後、夕方、夜。順繰りにこなすのではなく固定である。で、ぼくはというと午後担当。しかしながら、欠員が出た時や担当者の都合などで、朝1以外のすべての時間帯を経験している。

それらの時間変更を頼まれて断ったことが、ぼくにはない。なんとなれば、嫌な仕事では全然ないから。時間ごとに異なる仕事内容や客層についても知っておきたい。加えて、あてにされたらなんとかしましょうと思ってしまう。このような立場を「いいように使われているだけ」と嫌う人の気持ちも、まー、わかるが。

多くの時間帯を経験してみて、いろいろな意味で大変なのはやはり朝1だと思う。季節によっては、暗いし寒い。人の入りも最も多い。床に妙なモノこびりついていることもある。この時間帯に限っては担当者はふたりいるので、気が抜けないということもある。

その点、朝2は少し楽。朝1から遅れて出勤すること1時間半。すでに床の汚れは片付いている。表に立って、定期利用者には挨拶、一時利用者は誘導というのが専らの仕事だ。「おはようございます」、「行ってらっしゃい」を、ぼかぁ200回は言ってるな。そいで、前を行く1、2年生と思しき小学生に向こうから挨拶されたりすると、心が洗われるようにうれしくなったりもするな。

朝1は10時、朝2は12時で帰って行く。その後は本来のぼくの時間だ。一番楽なんじゃないかと思う。人の出入りは少なく、3時過ぎに高校生が帰ってくるぐらい。適当に場内を見回り、契約書を確認整理し、業務用の注意札などちまちま作る。飽きると見回り。後は座って物思いにふけったり。最低賃金で当然やんとも思う。

同じ最低賃金でも終日立ちっぱなしの人、あくせく動き回らねばならない人、絶えず誰かの目にさらされ気が休まることのない人、そんな人たちはいくらでもいるだろう。というか、ぼくら以外は概ねそうなんじゃないかとも思う。比べて、ぼくのなんとお気楽なことだろう。申し訳ない。

夕方。帰宅ラッシュの時間帯。これも別段忙しいとは思えないが、不正駐車などがあった場合、その対応はだいたいこの時間以降のことになる。クレームにも対応しなければいけない。そして夜。酔っ払いが絡んでくる。だんだん場内が寂しくなる。ちょっと嫌かも。

毎月の発売日が決まっている駐輪場も多い中で、ウチはいつでも定期券を新規、更新することができる。とはいえ、やはり月末、月初にそれは集中する。この時ばかりは忙しい。特にぼくの時間の終了間際から、引き継いだ後の夕刻。ぎりぎりまで更新手続きをしない高校生が列をなすのだ。きみたちねー、もうちょい早めに更新しなさいよと毎回思う。

ともあれ、ぼくはこの仕事が気に入ってはいる。空いている場所へ誘導しては感謝され。上段ラックへの上げ下げを手伝っては感謝され。契約更新手続きをすませただけでも感謝され。当たり前に挨拶をしただけでも感謝され。

もちろんなんの反応もない人も多いが、小さな感謝ひとつは、無反応が束になってもかなわない。小さな感謝が重なれば、それはぼくの上機嫌につながる。
3連勤がまた始まる。さぁ、明日も楽しいぞ。