桜木町、野毛、伊勢佐木町、あと墓参り

金曜日。ぼくが朝から出かけた先は桜木町。話題のインド映画、けれど県内でもたった3館でしかやっていない「花嫁はどこへ?」を観に。肩の震えを押さえられないほどぐっときた。ぼかぁ確かによく泣く奴だが、いつもはエンドロールが終わる頃には、涙はすっかり乾いている。ところが今回、そろそろ明るくなるというのにいまだ涙が頬を伝ってる。拭いましたよ、尻ポケットのハンカチで。両隣は空席だったけれど、後ろの席の人には丸わかりだったろう。恥ずかし。

こういう作品をひとりで観てしまった場合、以前はマダムを連れてもう一度観に行くのが常だった。しかし数年前、彼女はパニック障害を発症し、映画館に行くことができなくなった。暗い場所、大きな音、激しい光、めまぐるしく切り替わる画面などがダメになった。暴力や流血などもっての外で、ディズニーアニメでさえ躊躇している。この冬の「モアナ2」は観たいらしいが、どうなることか。

ともあれ、久々のインド映画に大いに気をよくして外に出る。ロープウェイが行き交う下、皆が楽しそうに見えるのは、そもそも自分が浮かれているからだろう。駅を通過し西口へ。通りは横断しづらいので「野毛ちかみち」を行く。近道のようでもあるが、確かなのは地下道であるということだ。地上に出ると、野毛中通りをずんずん歩く。目的地は星羊社。猫印ミルクのTシャツをば買いに。自分のとマダムのと。ちなみに、ぼくのは色違いの2枚目だ。

その後は大岡川を越え、福富町を抜け、伊勢佐木町を目指す。夜だとちょっと怖そうな福富町には、いつのまにかコリアンタウンのアーチが建っていた。確かに韓国料理屋が軒を連ねてはいるのだが、新大久保をイメージされると困ったことになってしまう。伊勢佐木町側からならともかく、逆から入るといきなりソープランドですぜ。あいごー。

さて、伊勢佐木町での目的地は、言わずと知れた文明堂喫茶館。ここのパステルが絶品なのは前にも書いた。どら焼きの皮ともいうが、その焼きたての美味なこと。右も左も常連と思しきシニア勢は、皆申し合わせたようにこれを召し上がっていらっしゃる。素敵、ハマの高齢者。日参できる身分に、ぼくもなりたい。

人心地ついたら、また歩く。この日は母親の墓参りも兼ねている。ついでがないと、なかなか足を運ぶことができない不孝者。向かう先への途中にあった横浜文化体育館には、前々回はコスプレ勢が集結していた。前回は解体工事中。そして今回はというと、その名も横浜BUNTAIという多目的アリーナに生まれ変わっていた。街も変わる。ぼくも老いる。やがて母のそばにも行く。

家族が無事でいることと、ひ孫の誕生を母には知らせた。キン坊の写真も見せた。さぞかし不思議なことだろう。血のつながらない孫とひ孫を彼女は持ったことになるが、そのひ孫が名札を付けて写っている。当然といえば当然、不思議っちゃ不思議、その姓はぼくと同じ、母と同じ。しかし、このことではないだろう。人は死んで名を残すというのは。