学生時代にウクレレを買ったのは、遠藤賢司の「寝図美よこれが太平洋だ」を聴いたせいである。寝図美というのは彼が飼っていた猫の名で、後に細野晴臣にもらわれていく。この曲をはじめ、細野は初期のエンケン作品でバックを務めてもいる。親交はアマチュア時代からあった。大瀧詠一らも出入りした、まー、細野サロンとでもいうやつですな。
もっともぼくは、この曲が収められた71年の『満足できるかな』をリアルタイムで聴いたわけではなく、初めて買った彼のレコードは74年の『KENJI』だった。そこから過去作品を遡る過程で「寝図美」を知ったというわけだ。俄然ウクレレが弾きたくなり、バッキー白片の教則本と一緒に買ってきた。バッキー白片。アロハ・ハワイアンズを率いたスティール・ギター奏者な。
というようなわけで手に入れたウクレレだったが、「寝図美」1曲をマスターしたらもう飽きた。ぼくのなかで再びウクレレがクローズアップされるには、「フラガール」の登場を待たねばならなかった。四半世紀後? もっとか。当然、手許にウクレレはもうない。ブリッジの糊なんてとっくに剥がれた。ジェイク島袋の演奏にはしびれたが、新たに楽器を買おうとはもう思わなかった。
そんなぼくがだ。なぜ今になってウクレレの話なんぞを始めたか。それはだな、見てしまったのだよ。知ってしまったのだよ。フェンダーが、あのストラトやテレキャスターのフェンダーが、まさにそれ風のウクレレを作っていたことを。知らずにいた方が幸せだったとまではいわないが、平穏だったとはいえよう。ぼくは今まさに物欲の葛藤のなかにいる。ほ、欲しい。練習だってきっとする。買っただけで満足してそれでおしまい。なんてことにはしたくない。きっとしない。
ところで、2006年の映画「フラガール」にいたく感銘を受けたぼくは、すぐにサントラ盤を買いに走ったのだが、そこにはエンドロールで流れる肝心のテーマ曲が収録されていなかった。インチキサントラと、これをぼくは呼んでいる。改めてジェイク島袋のソロ作品を買った。
映画自体は、劇場で2回観た。DVDも特典付きのを買った。一方、遠藤賢司はというと、80年の『宇宙防衛軍』までしかぼくはつきあうことができなかった。2017年に彼は70歳で身まかった。2年でぼくはその歳に追いつく。抜かないと。
「インチキサントラ」がツボにハマってしまいました。
その頃からテーマ曲が入ってなかったんですね。
2006年の日比谷野外大音楽堂でのケアリイ・レイシェル。
観客のおばちゃんたちが枝豆を食べていた
パワーにも圧倒されていました。(笑)
貰ったフライヤーに『フラガール』が紹介されて
いたなあ。