もう来なくてよろしいとぼくは言われた

癌の再発がないかを調べる10年めの、異常がなければ最後になるはずの膀胱鏡検査。その結果についてはさして心配していなかった。ここまで何事もなかったのだ。再発するなら5年以内が多いともいう。大丈夫。安心していていい。

とかいいながら、いったいなにが気がかり、なにが嫌、なにが鬱かというと、検査それ自体である。膀胱鏡検査。尿道から内視鏡を挿入し、膀胱を観察する検査。CTやMRIならいくらだって平気で受ける。痛くも痒くもない。しかし、膀胱鏡は嫌だ。胃カメラよりも、大腸カメラよりも痛いし不愉快。この苦痛の前では、下半身丸出し股おっ広げの恥ずかしさなどなにほどのこともない。

以前はゼリー状の潤滑剤が注入された後、数分してからカメラが入ってきたのだが、前回あたりから注入直後にカメラという段取りになった。効きが以前とはちがうのか。医師ごとの流儀なのか。よくわからないが、どちらにしたって痛いのは痛い。形容しがたい痛さ。脂汗浮かべ、口で息して耐えるしかない。

さらに、検査後の排尿がまた苦痛を伴う。尿道通過時の痛さが尋常ではないのだ。立ってなんか絶対できない。ぼかぁ毎回、ヒーハー言いながら、どえりゃあ時間かけて最初のおしっこをしている。2度めでもまだしている。3度めぐらいでようやく平気になってくる。個人差はあるのだろうが、消耗する。

というような苦痛が尾を引く検査ではあるが、結果だけはその場でわかる。1週間ドキドキして待つとか、そういう不安とは無縁。それだけはよしとする。安心して股ぐらの濡れを拭き取ることができる。膀胱を広げるために入れられた生理食塩水が、じわりと出てくるのだ。

ぼくのような膀胱癌に限らず、シニアによくある前立腺肥大や排尿障害にもこの検査が必要になってくる。苦痛だけれど、ものの5分とかからない。覚悟して潔く受けよう。あと、血尿が出たら、痛くも痒くもないからといって放置せず、恥ずかしいからといって後回しにせず、速やかに泌尿器科に行こう。発見が早ければ、膀胱癌は怖い病気ではけっしてないのだ。

ぐずぐずして進行させてしまったり、民間医療に頼ったりしない方が絶対いい。これは膀胱だけに限らない。あらゆる癌についてもそうだ。お金に物言わせて自己免疫力でどうとかこうとか、耳を貸さない方がいい。それで誰が生還したというのか。つうか、それで死期を早めた人を知っているはずだ。

とまぁ、ちょっとは啓蒙的なことも癌サバイバーは言っておく。