はじめに言っとく、泣いたさ、3度

この時期、映画好きの多くが足を運ぶ作品はといえば「キングダム」。
ぼくだって王騎将軍の最後の雄姿はそりゃ見たい。だが、今ではない。黙っていても、これは1ヶ月先までやっている。あわてて観に行く必要はないだろうってんで、同じ日公開の韓国映画「密輸1970」をぼくは狙っていたわけだ。

ところが、ここにきてにわかに浮上してきたのが「百元の恋」なる中国映画。すこぶる評判がよろしい。安藤サクラの「百円の恋」のリメイクだという。これは観た。クズどもが出てきて愉快な作品ではなかったが、ボクサーとしての安藤サクラの体のキレには目を見張ったものだった。

それを自ら監督も務める中国のコメディエンヌが、50キロの減量を果たしてリメイクしたという。もともと80キロほどあった体重を100キロ超まで増やして撮影開始。それをラストシーンに合わせて、55キロまで落としたんだと。それだけでも見ものなんだと。劇的ビフォー・アフターというやつ。

というわけで、今年9本めの映画は「YOLO 百元の恋」。YOLOはYou Only Live Onceの略で、人生は一度きりってことらしい。みんな知ってるんだろか。ぼかぁ、正直知らなんだ。ともあれ、それがこの作品のテーマで、そこはオリジナルとは違ってる。

展開はだいたいオリジナルに沿ってはいるが、そのエピソードいりますか?と訊きたい場面もいくつかあって、ちょっと長いしかったるい。が、後半はぐいぐい見せる。引き込まれる。

試合前、控え室を出て廊下を歩くシーンが見事の一言だ。体重が落ちていく過程はそれまでのトレーニングシーンで承知しているのだが、あくまでもウェアを着た姿であった。それがここで初めて肌を露出するのだ。腕、腹、背中。美しくて戦慄した。ごくりと喉が鳴るほどに。

主人公は歩きながら、ガラスに映った自分を見る。それはかつての自分の姿をしていた。何もなしえないまま、怠惰に太ったかつての自分。ふたりはガラス越しに会話する。ここだけでももう一度観たいと思う。いや、エンドロールももう一度観たい。あんなにも見ごたえのあるエンドロールは他に知らない。

大いに話題になって、拡大ロードショーされたらいい。上映館が少ないと、そうそう人に薦められないではないか。今、ぼくの近所では桜木町でしか観られない。もっと近場でやってくれたら、必ずまた観る。配信されたら何度も観る。

ところで、やはり監督・主演を兼ねた前作「こんにちは、私のお母さん」というのを、アマゾンプライムでさっき観終えた。これも終盤大詰め、そしてエンドロールで泣かされた。ジャー・リンというこの監督、この女優をぼくは信じる。