ウルトラ警備隊西へ

「ウルトラセブン」のアンヌ隊員が初恋の相手である確率が、自分の世代、特に怪獣好きの間では高いとみうらじゅんが書いていた。先日の新聞に。

ぼくは彼の1学年上だが、うむぅ、アンヌ隊員な。気にはなっていたような気がする。どれぐらい気になっていたかというと、そのロケ隊が我が街芦屋にやってきた翌日、ちょっとした騒ぎになった学校で「アンヌ隊員いた? 見た?」と直に遭遇したという友達に尋ねた記憶があるのだ。けっして初恋ではなかったが、小学5年生にとって気になるお姉さんではあったようだ。

そのロケが行われた回のタイトルは「ウルトラ警備隊西へ」といい、芦屋とともに神戸を舞台に前後編として放送された。学校からほど近い芦屋川沿いのカトリック教会や、防衛センターだとかいうふれこみの市役所が映っており、そこだけはしっかり覚えていたりする。ウルトラセブンが誰とどんな戦いをしたのかは、まったく記憶にないのだが。

この頃、ぼくの興味は怪獣からGSへと移行していたようだ。怪獣図鑑を大事にしていたのは4年生の時だったが、5年生になると「近代映画」誌のGS特集号を買ったりもしていた。ちなみに、他には毎月「ガロ」を買っていた。「紅い花」も「ねじ式」もリアルタイムで読んでいた。当然ながら目当ては「カムイ伝」だったが、これはぼく以上に母が読みたかったのではないかと思う。

とまれ、我が同級生はアンヌ隊員を直に見たのや否や。答えはノー。彼女はロケバスから出てこなかったと友は言った。それは残念。では、キリヤマ隊長やモロボシダンの姿は見たのか。サインをもらったりしたのか。その答えはもう忘れた。

当時のぼくは、3次元のアンヌ隊員よりも2次元の003に淡い恋心を抱いていたように思う。「サイボーグ009」の紅一点だ。少年マガジンに連載中だった「地中帝国ヨミ編」がちょうどその頃終了し、いたく感銘を受けたものだった。

テレビの中の3次元相手に恋をするのは、ぼかぁちょっと奥手だったのか、中学生になってからで、相手は明治チョコレートのCMに出ていた松本めぐみ。ほどなく加山雄三と結婚し表舞台を去っていった人だった。ひどく残念だったことを覚えている。