さまんとーみろんぐぁごー

たとえばぼくが利用しているサブスク、Apple Musicにはフィットネスとかエクササイズとか、さらに細かくズンバだとかピラティスだとかのカテゴリーがあって、それぞれの運動に適している(んじゃないかと思われる)音楽がチョイスされているわけだが、フィットネスジムなどでもおそらくは店舗向けのそういうサービスが使われているのだと思う。

1時間の有酸素運動時には自分で用意した曲を聴いているので、ぼくがジム内のBGMに触れているのは筋トレと着替えに要する短い時間なのだが、それでも時に「おっ!」という曲に出くわすことがある。誰のなんという曲なのか、それが今や瞬時にわかる。即座に手に入ったりもする。すげー。

昔は、こういう曲なんだけどと誰かの前で口ずさんでみねばならなかった。何時何分頃にかかった曲だと、試験放送を始めたばかりのJ-WAVEに電話して訊いたこともある。「サビの前に6回イェーという曲」だとパソコン通信の音楽フォーラムで尋ねたこともある。

本題はしかしそこではなく、ぼくが通うジムのBGMである。しばらく前から、流れる曲の傾向が変わったのだ。ジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」が流れた。ドアーズの「タッチ・ミー」が流れた。さらにPPMの「悲惨な戦争」まで流れた。契約チャンネルを変更したのか。懐メロチャンネルとかに。

その後も、古いところでBST(BTSではない)、新しいところでカルチャー・クラブ、ぼくなどにはうれしいところでイーグルス、ボズ・スキャッグス、ニコレット・ラーソンなんぞがかかっている。どうでもいいところ(失礼)では、ドーンとかオーシャンとかトム・ジョーンズとか。

そんな懐メロ全開ジムにて運動後、その日はCCRの「雨を見たかい」が流れてきた。その時だ。しばらく涼んで帰るのが常であるぼくと背中合わせに座っていた人が、小さくジョン・フォガティーに合わせて歌い始めたのだ。「はびゅえばーしーんざれーん」。つい聴き入ってしまった。

なんだか楽しい気分になって、「懐かしいですね」とぼくは声をかけていた。振り向いた先にいたのは、いつもとちがう時間帯に訪れていたこともあり、見慣れぬ白髪の男性だった。ぼくが中3の時聴いたこの曲を、彼は高校で聴いていたのだろうか。少し年上らしきその人がにやりと笑うのを見て帰った。

ぼくが上機嫌だったのは、その日が誕生日だったせいもある。この歳になると誕生日などなんのめでたいことがあろうかという意見もあるが、無事に元気にここまで過ごせた。祝ってくれる人だっている。ありがたく喜ばしいことではないか。そこに気づけ、忘れるな、と思う。

というわけで、おめでたい者がめでたい日をにこにこ過ごしたという話であった。