都合のいいこと、悪いこと

一年ぶりにして四回目の大腸カメラ。
二回目までは朝一番から一室に集められ揃って下剤を飲まされたが、
三度目からは自宅で悠々と準備して、頃合いを見て病院へ行けばいいことになっていた。
例の一室では毎度みんな出すものを出せずに悶々としていたりする。

準備とはこうだ。
検査前日、予約時にもらっていた下剤をコップ一杯飲んで寝る。
起きたら今度は腸内をすっかりきれいにする、これもやっぱり下剤ではあるのだろう、
まずいスポーツドリンクのようなそれを大量二リットル、二時間かけてちびちび飲む。
この間トイレには七、八回駆け込むことになる。

最後に出てくるものはもはや便とはいえず、尿かと見まがうような代物。
飲んだものがそのまま出てくる感じ。この状態を看護師に確認してもらう。
慣れない人は早い段階から看護師を呼んで何度も固形物を見せることになる。
こんな状態になったら見せてねという写真がそこかしこに貼ってあるのだが、
飲み込みの悪い人は少なからずいる。出が悪いというか。

こうしてぼくは、十名前後が朝から下剤を飲んでいる部屋をゆっくり訪ね、
目視確認を一度でパスし、遅れて来たくせに真っ先に検査着に着替える。
検査着、それは上だけではない。下もある。お尻に穴の開いた紙パンツ。

と、ここまでは前にも書いた。
そしてここから先も、実は前に書いたこととかなり似ている。

またも見つかってしまったのだ。ポリープが。
またも言われてしまったのだ。入院が必要だと。
ただし今回は、その場で入院を受け入れた。お尻丸出しのまま。
日を改めず、即座にポリープを切除してもらうことにした。

入院が必要なぐらいだから大きいのだろう。
またしても癌かもしれない。
あー、もー、何事もなくあっさり検査を終えて、
午後から遊びに行こうと思っていたのに。

しかし、ま、ぼくは入院にもすっかり慣れっこだ。
大事をとっての一泊きりだともわかっている。
癌にだって慣れている。今度もきっと、取ってそれでおしまいだ。
びびることなどなにもない。
なによりぼくは、都合の悪いことを一分以上考えることができない。

二週間後、切ったポリープの検査結果を知らされた。
放っておくと癌になるであろうタイプのものだったと。
つまりは癌ではなかったと。次の検査は二、三年後でいいと。
なんだかぼくは、いろいろ都合よくないか。

その日は半休ですむところ、あえて全休を取っていた。
午後から写真を撮りに出た。
いろいろ都合いいよな、ぼくは。