悩ましい金額

ホワイトデー。
昨年のその日を、入院中に迎えたぼくは、
院内の売店で買ったチョコレート菓子をマダムに贈った。
贈ったというか、お茶を濁したというか、なんつうか。
これは語り草になりますよ、などと言いながら。

その汚名を挽回せねばと、今日は朝から横浜まで出かけていった。
そんなところまで行かなくても、なんだったら駅ビルでも十分だとマダムは言うが、
彼女は近所の駅ビルスウィーツごときがお似合いの女では断じてない。
とぼくは胸を張って言ってしまう。わはは。

横浜まで出たついでに、自分の服も見て帰る。
おおいに洒落てはいるのだが値段がちょっと悩ましく、文字通り見て帰る。
しかし、マダムがオーダーしていた服の入荷を待って、横浜へは来週も行かねばならない。
その時に今日のあのジャケットがまだ売れずにいたら。
今度は我慢する自信がぼくにはない。

5万8千。
ぼくにとって1週間悩まねばならない金額がそれだ。