今日もトレッドミルに立つ

この夏でジムに通った回数が800回とあいなった。

というようなキリのいい話を、近所のジムがオープンしてちょうど4年めの夏にしようと思っていたのだが、ぐずぐずしているうちにトレーニング回数は840回を超えてしまった。

トレーニング。そんな大層なものではないが。
しんどいことは嫌なので、人がワンセット30回とかいってる筋トレを、ぼくは20回しかしない。ふんふんガチな人を横目に、一休さんのようにぼくはつぶやく。頑張らない、頑張らない。いや、あれは「あわてない」だったか。

頑張らない。疲れるようなことはしない。
ぼくのジム通いが4年も続いているのは、そのせいなのではないかと思う。
今日も頑張らなければと思うと行きたくなくなる。疲れるようなことをしにわざわざ行きたいとも思わない。行くのが苦になることはしない。気軽にふふふんとできることだけしに行く。

なので、トレーニングという言葉をぼくは素直に使えない。フハッとか荒い息を吐いている人たちに申し訳なさすぎる。小さくなって、こそこそマシンを使っている。フリーウェイトのエリアになんて、とても足を踏み入れられない。大いに気後れしてしまう。

数多く取り揃えられている筋トレマシン中、ぼくが使うのはわずか7種。腕だけでどんだけあんだよ、全部回りきれるかよなどと思いつつ、腕2、腹2、足、胸、背それぞれ1種をそそくさとすませると、あとは音楽を聴きながらの有酸素運動を2種30分ずつ。だいたい80分のコースである。

最後のランニングならぬジョギングは体が軽いと欲が出て、あと500メートルとか、もう5分とか思いがちだが、いやいや頑張ってはいかんときっちり30分でやめられるようになってきた。隣が1時間走り続ける人であっても、対抗心は禁物だ。若い女性にいいところを見せようと思ってもいけない。己の年齢を考えろと戒める。

ジムに通い始めた頃は、走るのなんてとんでもないと思っていた。3ヶ月ほどしてちょっと走ってみたろかしらんと思ったら、ものの5分と続かなかった。それを過ぎたら、今度は毎度のように足が攣る。気持ちよく5キロ走れるようになるまでにはずいぶんかかったのだった。

それだけ走れるようになれば、しかし、もう十分。というのはちょっとちがって、正しくは5キロ走ったらもう飽きた。体より先に、アタマが嫌だと言い出した。
どうもぼくは走ることがあまり好きではないようだった。ちなみに学生時代はラグビー部、ポジションはナンバー8。始めた頃はそんな名前ではなくて、バクセンといっていた。バックロー・センターの略。どんだけ昔の話であることか。

というわけで往年のラグビー少年は、元気に走っていられることを喜び感謝し、病に倒れ、あるいは身罷った友に思いをはせつつ、今日もトレッドミルに立つのであった。