When I’m Sixty-Four

ビートルズよりむしろ、その弟分と見なされていたバッドフィンガーをよく聴き込んだ。
だから映画「ガープの世界」を観た時、そのテーマ曲はなんだかバッドフィンガーみたいであるなと感じた。わかってみればなんのことはない、それはビートルズの「When I’m Sixty-Four」だった。ほら、バッドフィンガーっぽいと感じたのもむべなるかな。いや、言い訳か。

とまれ、この名曲をバックに赤ん坊が宙を舞うところから、30年以上にわたってぼくが好きな映画の一番に挙げる「ガープの世界」は始まる。
主な出演者はロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ、ジョン・リスゴー。
時は80年代の初め。その誰をも、ぼくはまだ知らずにいた。

時は流れて2020年。この10月いっぱいで退職することとあいなった。
定年はすでに過ぎ、嘱託として4年勤めた。
先月頭から有給休暇の消化に入り、今は毎日遊び暮らしていたりする。
朝一番にジムへ行き、「あつ森」して昼寝して、映画観て猫撮って、マダムと買い物行って、あと韓国語の慣用句だの単語だのと格闘する。一日にこれら全部は無理なので、うち四つぐらいを日々こなす。「あつ森」と韓国語だけは毎日だ。うひひ。楽しくないわけがない。

そんななか、慰労の意もこめてか息子夫婦(仮)が旅行に連れて行ってくれた。
息子とは、以前うちの二階に暮らし、パンクだバスケだラーメンだなどとのたまっていた奴だが、危うく子供部屋おじさんと化すところを、昨夏、麗しい女性に救われ、今は近所、徒歩圏内に住んでいる。「息子夫婦(仮)」表記は未入籍であることを示している。この息子と嫁(仮)が共謀し、ぼくとマダムをば草津から榛名方面へと連れ回ったのである。ぐふふ。うれしくないわけがなかろー。

さて、ぐずぐずしているうちにというか、遊び呆けているうちにというか、10日近くも前の話になってしまったが、17日の土曜日、ぼくは誕生日を迎えた。
その日の韓国語の授業で「最近、最も気分がよかったのはいつで、それはなぜか」との質問があった。出かける前に手をつけた「あつ森」で、一番好きな子に迎えに来てもらい、彼女の家で誕生パーティーを開いてもらったこともあり、「今日です。なぜなら誕生日だから」と答えたらば、センイルチュッカの合唱が始まった。わはは。うれし恥ずかしとはこのことだ。

なぜ女装しているのかは謎だが、こうしてぼくは64歳になったのだった。