ヘッズ、ウェイマス、そして関内

女性ベーシストといえば、ぼくなんぞは往年のスージー・クアトロから、新しいところではマネスキン、ヴィクトリアまでを思い浮かべるわけだが、では好きなのは誰かと問われたら、それはもうティナ・ウェイマスだと答えるしかないのである。他に誰を知ってるんだとは訊いてくれるな。

というわけで、今年3本目の映画はトーキング・ヘッズの「ストップ・メイキング・センス」。40年前のライヴ映像の4Kレストア版という触れ込み。よくわからないが、まー、絵も音も当時よかうんとよくなっているんだとか。

近所のシネコンでは、これをIMAXと小さいハコとの双方で1日3回上映という暴挙に出た。いやー、それはやり過ぎやろ。クィーンのようにはいきまへんで。ヘッズを知らん人の所業やろ。そんなんするんやったら、小さいハコで「レディ加賀」やってんか。

などといいつつ、とても楽しい時間を過ごした。
85年の『リトル・クリーチャーズ』が一番のお気に入りというぼくにとって、この83年のライヴは当然ながら魅力ある選曲ではない。音だけなら最後まで聴き通すことはなかっただろう。それを、デヴィッド・バーンの動きで魅せてしまう。コーラス隊で魅せてしまう。そこにティナ・ウェイマスがいるだけで魅せてしまう。彼女こそが最もキュートなベーシスト。

まったく同じ感想を、初見でも持っていた。友人に借りたVHSビデオで昔観たそれを、大きな画面、大きな音でもう一度味わうことができた今回の上映は、本当にありがたかった。ただ、ハコふたつ使うのはやはり無謀。何度でも言う。無謀。どの回も20人ぐらいしか入ってへんやろ。そんなんやったらレディ加……まだ言うか。

ところで、ぼくが彼らの6枚目のアルバムである『リトル・クリーチャーズ』を買ったのは、横浜、関内の外盤屋だった。同時にケイト・ブッシュを買った記憶がある。当時はレコードを買うのも、映画を観るのも、デートするのも、ハマのメリーさんを目撃するのも、みな関内だった。桜木町とか、なんのためにある駅なんだと思ってた。つうか、桜木町止まりの電車がうざかった。関内慕情。せきうちではなく、かんない。

【脚注】JR関内駅は、横浜から根岸線、あるいは京浜東北線に乗り換えて二つめ。桜木町駅の次。