思い出の中でだけ鳴れ

マルティネスとかグリフィスとか、意外なところでミッフィーとか、今でこそいろいろ存在するメラニーだが、70年代初頭、メラニーといえばこの人しかいなかった。死亡記事にソフィカとあった姓は、当時サフカとされていた。グレン・フライも昔はフレイだったし、ゲーデにしてからがギョエテだったわけだから、気にすることでもない。とにかくだ。そのメラニーが逝った。

こんな他愛のない曲がなんで全米ナンバー・ワン?
中学生のぼくですらそう思った「心の扉を開けよう」は、しかし、けっして無視できる曲ではなかった。というか、かなり好ましい曲だった。どころか、これが収められたアルバム『ギャザー・ミー』はジャケットも含めて大好きな1枚だった。ミュージック・ライフの付録だったそのポスターを、大事に部屋に飾ったものだ。

ガット・ギター1本でのカーネギー・ホールのライヴ・アルバムも愛聴していた。曲間、ひとりの男性が「We love you」と声をかけると大きな拍手に包まれる。一人称複数。英語ってなんて素敵なんだろうと思ったぼくは15歳。

と思い返すことはしても、改めて聴き返そうとは思わない。彼女の曲はどれも、思い出の中で鳴っているのが一番美しいはずだから。

そんな訃報の中、立ち寄った本屋で「パンタ/頭脳警察」がなんたらかんたらという1冊が目に止まった。パンタも去年逝ったひとりだ。

「ビート・オン・プラザ」が日本のロックを特集した高3のたぶん夏、四人囃子とともにぼくの耳を奪ったのが彼の初のソロ・アルバムだった。その後のPANTA & HALは何度も観た。ただし、残念なことに今剛が抜けてから。「マラッカ」のギター・ソロは日本最高峰だと今も思うぞ。

話がそれた。パンタの本だ。当然、手に取る。値段を見る。26××円。思わず見返す。まちがいない。2640円。なんじゃこりゃ。ぼったくりやろ。「ミュージック・マガジン」の昔の記事の寄せ集めやろ。ふっかけすぎやろ。メルカリで安くなるの待ち決定。「細野晴臣と彼らの時代」もそうしたように。

というわけで、今回はメラニーとパンタ。
いつか中山ラビとトム・ヴァーレインについても語りたい。
西岡恭蔵についてもきっと語ろう。
しかし、大瀧詠一やジョン・レノンについては、今さらぼくが語るまでもあるまい。