湘南、鎌倉、大船へ

眠れない時は楽しいことを考えるといいんだよとマダムが言った。
前夜の寝つきの悪さをぼやいていた朝のことだ。

なかなか眠りが訪れない時、ぼくはよく数を数えている。羊ではない。ロックバンドやギタリスト、あるいはこれまで観た韓流ドラマの数だったりするわけだ。指折り数えているうちに、40だか60だかわからなくなって眠ってしまうことがしばしばなのだが、先日は韓流ドラマを130以上数えてしまった。いや、話の主題はそこではない。

眠れぬ夜に考える楽しいこと。それは空想だとか妄想だとかいうやつかとマダムに問うと、どこそこ行って楽しかったなとかそんなことだと答える。それは考えるのではなくて、思い出すというやつではないかとぼくは言う。考えるというのは対戦中の藤井名人がしているような、将来あるべき自分を思い描いて、そのために今何をなすべきかを書き記した大谷選手がやったようなことではないのか。

などという疑問を今回に限らず呈しているぼくは、ああ言えばこう言うやつだと呼ばれているのだが。

というわけで、前回の河津桜に続いて、今回は玉縄桜。楽しい思い出作りの一環。
玉縄桜とは何かというと、鎌倉の地でソメイヨシノとオオカンザクラの交配によって生まれた早咲き品種。今まさに満開のこれをば誕生の地、大船フラワーセンターに見に行く。たまに買い物や食事に行ったり、観音様を拝みに行ったりする大船だが、フラワーセンターまで足を伸ばすのは6年ぶりだ。


ぼくがこちらに越してきた頃、横浜ドリームランドに向かうモノレール駅の看板だの軌道だのが大船駅からまだ見えた。休止されて10数年たっており、ほとんど廃墟といったありさまだったが、一度は乗ってみたかった。ちなみに、江ノ島に向かう湘南モノレールも、途中なかなかスリリングで大好きだ。カップにそれが描かれたマーロウの限定プリンも並んで買ったし。

フラワーセンターに話を戻して、玉縄桜。同じ早咲きでも色は河津桜と異なり、うんと白い。ソメイヨシノにずっと近い。この新種を広める会というのがあったらしく、フラワーセンターのみならず周辺の学校だとか神社だとか、沿線ではちらほら見ることができる。ただ、育てるのはソメイヨシノより難しいそうなので、今はまだローカル桜。もしかすると、いつまでも。だもんで、一度は見においで。湘南へ。鎌倉へ。大船へ。


だけじゃない大船フラワーセンター。花を浮かせた水瓶が並んでた。キレイ。